ヴァロケリム語
Varokeřim (Enoma)
エレメントの力を操る人工言語
ヴァロケリム語 Varokeřim は、フィラクスナーレを構成する8つのエライジエス Elhigyeth(エレメントの力)を操作するため、8人の英雄(サルナ・アフィータ Sarna Afhita)によって創造された人工言語です。言い伝えでは、英雄たちが丸360日のあいだ寺院に篭り、話し合って創造されたことになっています。
はじめに作られたヴァロケリム語(古ヴァロケリム語 Varokeřim Vasdora)は複雑な文法を持ち、習得することが難しいようにできており、それによってこの言語の濫用を防いでいました。ところが、時が経つにつれ、妖術と呼ばれる邪悪な術に流用されたことで、ヴァロケリム語自体が汚染されてしまいます。これに対し、8人の英雄の後継者たるウォトゥーリアの賢人たちが、ヴァロケリム語を大幅に改革しました。こうしてできたのがヴァロケリム・エノマ(新ヴァロケリム語 Varokeřim Enoma)です。通常ヴァロケリム語というと、ヴァロケリム・エノマのことを指します。
ヴァロケリム語の音素は比較的少なく、子音は有声性における対立を、母音は長短の対立を持ちます。類型論の観点からは膠着の度合いが高いといえ、品詞、名詞類の格、動詞の時制などは主に接辞で表現されます。名詞は5つの格を持ちますが、性・数に応じた語形変化は見られません。
アルティジハーク語
Artíjihàk
ロランダール帝国の共通語
アルティジハーク語 Artíjihàk は、一時は東多島海全域に勢力圏を伸ばした大国であるロランダール帝国の公用語です。アルティジハーク語の属するアンダル語派は、ヴァリ語派、アヴェリ・エスュル語派とともにエスュル語族をなします。
アルティジハーク語は、本来ロランダール帝国の支配階級になったラゴン族の言語でした。ロランダール帝国がヴェリナーク家のィラハリスによって建国されてから、ロランダール帝国の崩壊までの数百年のあいだ、東多島海の島嶼部において広く通商語・共通語として用いられ、ロランダール帝国統治下にあったさまざまな民族の言語に影響を与えました。アルティジハーク語にはさまざまな方言があり、中でも首都の方言である帝都方言を話せるということは、ラゴンの貴族階級のあいだで大きな誇りとされました。また、アルティジハーク語による文学作品も多く書かれ、ロランダール文化の形成過程で大きな役割を担いました。
アルティジハーク語は、/p, b/ の音素を持たず、/f, v, θ/ などの摩擦音、/l, r/ の流音を多用します。また、豊かな母音システム(アーワ・フリスミリン体系)をもっており、音韻プロセス・形態プロセスを通じて4つの系列の母音が交替します。形態論的には屈折語であり、名詞は性・数・格に応じて曲用します。他の語族との接触の結果、膠着的な特徴も併せ持っており、例えば動詞のアスペクトなどが接頭辞・接中辞・接周辞などで表されることがあります。
オトバアラン語
Othba’aran Aḵtanat
破壊神信仰において重要視される宗教言語
オトバアラン語は、南大陸・大西大陸に分布するティヘブ語族に属する古典語で、南大陸王国の公用語であるトオン語の直接の祖先にあたります。
オトバアラン語は、南大陸王国期に不死王イグワムによって開かれたリマ教において重要な位置を占めました。リマ教では、死と沈黙の神エグゴーレドを唯一神とし、その礼拝にあたってオトバアラン語で書かれた教典・礼拝音楽を用いました。イグワムは妖術の力により760年以上のあいだ南大陸王国を統治しましたが、ヴァロケリム語は、その統治期間の間にエグゴーレドに対する礼拝のための言語としての地位を確立し、リマ教が広まった地域の言語使用の状況に大きな影響をもたらしました。イグワム王の統治が始まって約100年が経過したころには死語と化し、日常会話にはその娘言語であるトオン語が用いられるようになりましたが、一部の公文書、墓碑銘、宗教文書などでは依然オトバアラン語が用いられ、知識人階級には必須の教養となりました。
オトバアラン語は多くの音素を持ち、子音が有声性・有気性で対立するほか、母音も長短の区別があります。文法は複雑で、名詞は13の格と3つのクラスを持ち、さらに単数・双数・複数の3数の語形を持ちます。また、格アラインメントは分裂能格性を示し、名詞句階層の上位に位置する名詞句の場合のみ主格—対格型のアライメントが現れます。